以前は3D空間を作るのに他社製品を使っていたけれど、なかなか思った通りに操作できなかった。でもMotionはとても使いやすかった

株式会社アイネックス:
Final Cut Studioが開く
ポストプロダクションの領域

岡田勉氏

株式会社アイネックス 岡田勉氏

Motionで作る、テロップを超えたテロップ

通常のテロップに加えて、さらにバラエティ番組向きの賑やかな映像を作るために、動きのあるテロップ制作にMotionが使われているという。アイネックスのエディターたちはMotionの操作性の高さを評価する。

「以前はAfter Effectsを使ってたんですが、Motionのほうが感覚的に使えて操作性がいいし、当然のことですが、Final Cut Proとの連携も良かったんですよ。キーフレームを打たなくても、ビヘイビアを乗せたらぱっと動くというのがいいですね。あと、素材集として使うことも多い。火の素材とか光の素材とかいっぱい入ってて、あれがすごい使える。買おうとしたらすごい値段になるのがたくさん入ってるんですよ」(岡田氏) 「たしかにMotionは使いやすいですね。だからアシスタントさんにiMacでMotionを組んでもらったりできるので、作業の効率がいいし、アシスタントのスキルアップにもなるんですよ」(今西氏)

テロップ1つ1つを3D空間の中に配置して、Motion上のカメラで写していくといったカメラワークを再現したような効果など、リニアでやろうと思ったら大変なこともMotionなら手軽に実現できる。こうした作り込みができるのも、ノンリニアで気軽に試行錯誤ができること、そして浮かんだイメージを即座に形にできるFinal Cut Studioの操作性があってこそといえるのではないだろうか。

収録以降、完パケまでのテープレスを実現

アイネックスが多く番組を手がけている朝日放送でもまた、全面的にアップルのシステムが導入されている。以前紹介したように、朝日放送ではスタジオの収録と同時にほぼ自動的にデジタイズが行われ、データはすべてXsanに保存される。ディレクターたちは局の編集室からXsanのボリュームにアクセスして仮編集を行っている。

さらに、アイネックスと朝日放送とはネットワークがつながっており、アイネックス用に設けられたNASにデータをコピーするだけで、ディレクターはアイネックスで本編集できるようになっている。この環境は、局のディレクターとポストプロダクション、双方にとって非常に仕事がしやすいという。

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「アイネックスさんにポストプロダクションをお願いしている『美女裁判』が始まって4回ですが、僕は収録テープを触ったことがないです。納品はテープですけど、収録テープをまだ見たことがないですね。収録して、それをウチの編集室で仮編集したものをアイネックスさんに送ってしまえるから、そこにテープは一切介在させないですむ。これはものすごく楽ですね。ほかの編集室に行く場合は、デジタルカットして持って行かなければいけなかったりしますが、その分の時間がいらないから、非常に仕事しやすいですね」(近藤氏)

ロケや追加素材の場合などは、テープを持ってくるということもあるというが、たいていの場合はファイルだけで済んでしまうという。また、通常ならばポストプロダクションに来る前にある程度仮編集を済ませておかなくてはならないが、アイネックスとの場合では、悩んでいたところを残しておいて、ポストプロダクションでエディターと共に考えるということも可能になる。

「ディレクターさんにとっては仮編集の途中でも持ってきて本編集できるというメリットがありますよね。映像データを局のSANからコピーするだけで本編集に持ち込めるので、カットをちょっと延ばしたいというときにも、素材がある限り延ばせますから」(岡田氏) 「僕らは常に時間に追われていますし、時間があったならあったで、ギリギリまでやりたいと考えますしね。ギリギリまでやりたい人には、非常にいいシステムですね。素材が共有できて、こちらに来てもまだ考えられるというのは」(近藤氏)

今西政之氏

株式会社アイネックス 今西政之氏

ノンリニアで作業時間が早くなったとしても、もし試行錯誤できる時間があるならとことん追求したくなるというディレクターは多いという。近藤氏はそんな状況を「ノンリニアになってから、ディレクターの寝る時間は逆に減っているんじゃないか(笑)」と冗談めかして話す。作業できる時間が増えた分、ポストプロダクションのエディターの役割が広がったとも言える。

「正直、Final Cut Studioでどんなことができるのかというのは、ディレクターには未知の領域だったりするんですよ。そこまで詳しく使い方を覚えている暇はないですし。だから、あーそんなのもできるんや!という驚きがちょいちょいありますね。だからいつも想像を超えたものを出してくる岡田さんのことを僕はマジシャンと呼んでます(笑)」(近藤氏)

ノンリニア編集はこれまでポストプロダクションが持っていた技術を一般にまで広げた。だからこそ、単なるオペレーターではなく、よりクリエイティブなサジェスチョンをディレクターに提供する。それこそ「どわぁぁぁっ!」を賑やかな映像効果に仕上げてみせる役割が、これまで以上にポストプロダクションに求められていると言える。ただの道具ではなく手足として使えるクリエイティブなツールとして。Final Cut Studioがアイネックスのエディターたちに受け入れられた理由はそこにあるのではないだろうか。