IMAGICA 湾岸スタジオ:
湾岸スタジオと品川プロダクションセンター
30kmの距離をつないだXsan

世界初のXsanによる2拠点間構築

湾岸スタジオの編集室において、編集開始までの時間を短縮したのがリアルタイムインジェストであったとするならば、編集作業を高速化したのが、Xserve RAIDとXsanを用いたストレージエリアネットワーク(SAN)だ。

菊田和弥氏


同社品川テレビ制作部
ワークフロー・システムコーディネート菊田和弥氏

SANは、通常のLANケーブルとインターネットプロトコル(IP)を用いたファイルサーバとは異なり、光ファイバとファイバーチャネルプロトコルを用いて、同時に複数台のストレージへアクセスすることで、LANを超える広い帯域を確保することができる。これにより、遅延なくSANボリューム上のファイルを編集することが可能になる。音楽や静止画よりも遙かに大きなファイルを扱う動画編集には最適なシステムだ。今回、ストレージに7台のXserve RAIDが、いわばLANでいうところのルータに当たるファイバーチャネルスイッチにはQlogic製のSANbox9100が用いられている。SANの総容量は49TB(テラバイト)で、もちろんこれも容易に増設が可能だ。

さらに、このSANには画期的な仕様が盛り込まれている。それは、湾岸スタジオとIMAGICA品川プロダクションセンターのSANボリュームが、2拠点間で接続されている点だ。Xsanを用いた2拠点間構築としては世界初となる。ゲートウェイであるADVA製DWDM FSP2000を用いて、湾岸スタジオのSANは青海から線路長で30km離れたIMAGICA品川プロダクションセンターのSANと、ダークファイバで接続されている。これにより編集用のMac Proからは、湾岸スタジオのSANにあるファイルも品川のファイルも、内蔵ハードディスクにあるファイルと同じ感覚でアクセスできるのだ。先例がなかったにも関わらず、2拠点間構築はすんなりいったという。

「思いのほか、すんなりいきました。相手の拠点にあるボリュームをあたかもローカルストレージのように扱える。直接9面マルチを叩いても、なんのレスポンスが悪いこともなく走ってくれる。ちょっと驚異でしたね。それは特筆すべき事だと思います」(菊田氏) 「30kmありますし、遅延は大丈夫かと最初は危惧していたんですが、やったらすんなりいきました」(加藤氏)

この2拠点間構築によって、ポストプロダクション作業にどのようなメリットがもたらされるのだろうか。

「例えば、ロケ素材を品川に持ち込んで、デジタイズしたものを、品川から湾岸スタジオのボリュームにキャプチャーということができるわけです。実際、今日この湾岸スタジオでリアルタイムインジェストを行っている作業も、品川で編集の作業が予定されているので、品川のボリュームに直接キャプチャーしています。」(菊田氏)

例えば、ロケで撮影したテープを誰かが預かって運び、湾岸スタジオにいるIMAGICAの営業に届け、営業がアシスタントに渡して、VTRを1本ずつデジタイズしていく——そんな手間と時間のロスがなくなるのだ。また、多忙なディレクターが、いちいちどちらかの拠点に移動しなくても編集を開始できるというメリットもある。また、拠点間をまたいで、相手のボリュームにあるファイルを直接編集することも可能で、それも特に負荷をかけずにできる。

「こっち(湾岸スタジオ)でやろうとしても、バラエティは並行で何本もやったりしますから、どうしてもA班には1室足らないということが出てくる。その場合でも、品川にはいっぱい編集室があるのでそっちでもできたらいいだろうなと」(加藤氏) 「こっちでは頑張ってもあと1〜2室とか、その程度しか作れない。バラエティセンターのすべての仕事を回すことは、とてもじゃないけれども難しいです。でも、品川は拡張できる余地があるから、品川にどんどん素材を投げて、そちらで作業することができます。」(菊田氏)

アップルだからこのシステムを組めた

かくして9月に稼働を開始した編集室だが、現場の反応はどうだったのだろうか。おそらく、実際に編集を行う人間に感じられる一番の変更点は、他社のシステムからMacとFinal Cut Studio 2に移行した点だと思われるが、問題はほとんどなかったと言う。

「基本的には今まで他社製品を扱っていたエディターが、トレーニングを受けてFinal Cut Studio 2を使っています。まだオペレーションに慣れていない部分があるかもしれませんが、移行にはそれほど障壁はなかったと思います。設定周りやユーザ管理などの使い勝手が、他社のシステムとFinal Cut Studio 2とでは違うところに、戸惑いがあるみたいですが、 “FCP Manager”という設定管理ツールを導入したので、それもじきに落ち着くかなと思っています」(菊田氏)

また、IMAGICAのクライアントであるディレクターにもFinal Cut Proのユーザが多かったため、一貫してFinal Cut Proで効率良く作業できていると言う。リアルタイムインジェストの効果もあり、尺を作るまでの時間も短縮され、明らかに効率化が進んでいる。今後の課題としては、Apple ProRes 422への対応や、リニアの機材と混在させるハイブリッド化などが検討されているそうだが、ひとまずは現在のところ不具合の検証も進み、安定期に入っていると言う。

「いろいろと他のメーカーも検討しましたけど、予算内で十分満足行くシステムが組めそうになかった。アップルだったら組めてしまいました、というところですね。他社製品も単体の機能で見れば特にアップルの方が優れているとは思わないですが、価格差はもう、圧倒的に違います。それにその価格差に伴う高度な機能をそれだけ使うかといったら、そこまでは使わなかったりする。今回、必要十分なシステムが組めたんじゃないかなと思っています」(菊田氏)

システム構成

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