毎日放送: 放送局の意思を実現するXsan
毎日放送では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの敷地内にサテライトスタジオ「MBSスタジオ in USJ」を設置している。XsanとFinal Cut Proを導入したMBSスタジオ in USJを訪ね、アップルの映像ソリューションが最新の放送スタジオでどのように活用され、何をもたらしたのか、話を伺った。
MBSスタジオ in USJは、XsanとFinal Cut Proを利用し、撮影から収録、編集に至るまでフルHDに対応したスタジオと編集設備を備えている。設立当初は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの見学コースにも組み込まれており、スタジオの周囲には見学できるように回廊が設けられている、広大で伸び伸びとしたスタジオだ。生収録が多い本社スタジオに対して、ここでは、主にバラエティやドラマなどの番組を収録し編集している。中でも「水野真紀の魔法のレストラン」などのバラエティ番組の映像編集及び音声編集のシステムに、XsanとFinal Cut Proを採用。12月8日から放送のドラマ「家族善哉」は、ドラマでは初の全編Final Cut Pro編集による作品になる。放送局として最も早い時期にXsanを導入していた毎日放送だけに、様々なノウハウの蓄積もあり、その経験を踏まえて、字幕スーパー入れを行うリニア編集機とFinal Cut Proベースのノンリニア編集機を組み合わせたハイブリッド編集ソリューションの構築を試みている。
株式会社毎日放送 技術局 制作技術センター ポスプロCG担当 主事 高田 仁氏
試行錯誤から生まれた使い勝手の良さ
放送機器というと、これまではメーカー主導の専用機しか選択肢がなかった。そこに汎用機であるアップルの機材を導入するのは、それだけで冒険ではあったのだそうだ。 「当初は、汎用機だけに曖昧な部分が多いかなと思っていたのですが、使っていくうちに、専用機に比べて使う側の要求に合わせて様々に対応できる柔軟性が、日々環境や目的が変化するうちの局に向いているのではないかと思うようになりました」と、技術局制作技術センターの高田仁氏は言う。高田氏は最初のノンリニア編集システム導入の頃から関わっているため、アップルの映像ソリューションの進化を最も近くで見てきた人の一人。「アップルのサポートも良かったせいか、仮に何かしらの障害が起きても解決策があり、またバージョンアップによって根本的に解決しています。私たち以外の導入事例も増えて、アップル周辺機器のメーカーも含めてここ数年で急速に製品性能が向上しました。こういう新しいソリューションの場合、僕ら技術畑の人間になら使えても、すぐに実際の現場に下ろせるわけではありません。でも、導入以来の試行錯誤と、急速な性能と安定性の向上のおかげで、今では現場に一任して使えるレベルに達しています」。
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トータルコストを軽減するXsanによるメディア共有環境
最初は、Final Cut Proで何ができるのか、というところから始めたという高田氏。「専用機に比べて、とにかく安価だから導入が比較的簡単なんですね。しかも、システムを新しくしようとした時でも、機材が使い回せるからトータルコストパフォーマンスがとても良いんです。次に求めたのは、性能や機能です。例えば、一番最初に考えたのは、Xsanによるメディアの共有環境です。過去、デジタイズには大変苦労していて、収録から放送までに何度も同じファイルをコピーする必要がありました。それがSAN(Storage Area Network)を使うことで、1台のマシンで1度映像素材を取り込めば、後は他のマシンでファイルコピーすることなく、どのSANクライアントでもその素材が使えます。これだけでもかなり多くの人の労力が減ります。特にADの労力と、そのための人件費は大きく改善されます。そして編集素材が常に用意されているという安心感と、編集のスピードアップは、放送局としてとても大きなメリットです」。
高田氏によれば、Xsanの導入によって、様々な局面で映像編集のワークフローが大きく変化したという。「例えば、3時間の番組を制作中に、最初の1時間分ができたところで音入れ作業が並行してできます。つまり同時進行で収録、編集、音入れの作業が行えるようになった。これまでは、全部完成しないと次の工程に渡せなかったのが、今なら小出しで渡せます。皆がそれぞれの仕事を並行してできるというのは、効率化だけでなく作品クオリティの向上という点でも大きいんです。スタッフ皆からXsan環境をどう利用するかというアイディアがどんどん出て来ます」。
フレキシブルで直感的な作業環境がXsanの強み
従来の放送設備は仕様がしっかりと決まっていて、後で細かい部分の使い勝手を直そうとしても、「仕様ですから」と直せないのが普通だったと言う。「でも、Xsanのシステムだと、ある意味仕様の制約がないようなもので、いくらでも自分たちのニーズに合わせて環境を組み立てられるんです」と高田氏。
また、取り込んだ映像素材がすべてQuickTimeのファイルとして保存されることも使い勝手と安全性の確保に役立っていると言う。「Final Cut ProでデジタイズしたデータはすべてQuickTimeファイルとなります。QuickTimeファイルなら、Final Cut Proが入っていないマシンでもファイルを開いて映像を直接確認できます。また、ファイル名を細かく付けて管理できるのは助かりますね。同様のノンリニアシステムでも、中には脈絡のないファイル名が勝手に付くものや、ファイルをダブルクリックしても再生はおろか、何も表示されないものもありますから。特にパソコンに詳しくなくても、直感的に扱えるQuickTime、そのファイルを総合的に管理できるXsanというのは、現場向きだと思いますよ」。現場で真に使えるシステム構築を心掛けてきた高田氏ならではの感想だ。



