映画監督 下山天:
Mac Proが切り開くHD編集の
新たなスタイル

WOWOWのオリジナルドラマ「真夜中のマーチ」。この作品の制作にあたっては、本編のオフライン編集はもちろん、オンライン編集まですべてMac ProとFinal Cut Proによって行われている。「真夜中のマーチ」の監督であり、自ら編集に携わった下山天監督を訪ね、Macによるハイビジョン映像編集のワークフローと、その可能性について話を伺った。

人気小説をドラマ化、劇場公開も視野に

下山天監督が手がける作品ジャンルは実に幅広い。監督デビューは久保田利伸のミュージックビデオ。桑田佳祐のライブツアーに密着した「すべての歌に懺悔しな!!」や、映画「CUTE」といったドキュメンタリータッチの作品のほか、テレビドラマ「アナザヘヴン eclipse」、映画「弟切草」('01年)などホラー作品の監督も手がけている。また、日中合作映画「アバウト・ラブ/関於愛」では国籍を超えたラブストーリーを、「SHINOBI」では時代劇アクションに挑戦。さらには、ネット配信ドラマの総合演出、テレビCFの監督やゲームソフト、遊園地のアトラクション映像の演出まで、活躍の場は多岐に渡る。

「僕もこの世界に入って20年、映画の製作ができるところまで来ました。でも、監督というのは『あの人は、こういうジャンルの作品を撮る人だ』とレッテルを貼られてしまいがちです。一度そうなると、将来本当に撮りたいものができた時、撮れなくなってしまう。だから、より多くの作風に挑戦して、撮れる範囲を常に広げてきたつもりです。もともと新しいもの好きなんでしょうね。何にでもチャレンジしてみたいんですよ」と下山監督は語る。

そんな下山監督の最新作が、2007年4月15日にWOWOWでオンエアされるハイビジョンドラマ「真夜中のマーチ」である。原作は直木賞作家奥田英朗の同名小説。ふとしたことから出会った三人の男女が、10億円の強奪を計画。アクションあり、カーチェイスあり、ヒロインをめぐる恋愛模様ありと、盛りだくさんなエンターテイメント作品だ。

この「真夜中のマーチ」は、WOWOWのオリジナルドラマプロジェクト「ドラマW」シリーズの一つとして制作された。「ドラマW」の番組枠は約2時間。評判の良い作品は、後日劇場でも公開されるというだけあって、過去には著名な監督が数多く起用されている。市川崑、大林宣彦、久世光彦といったそうそうたる顔ぶれに混じって、下山監督は、過去に「コスメティック」('03年)「アウトリミット」('05年)で2度監督を務めている。「ドラマW」で複数回登場したのは下山監督と堤幸彦監督の二人だけ。下山作品に対するWOWOWと視聴者の期待の大きさが伺える。

Mac ProとFinal Cut Proで全編を編集

「真夜中のマーチ」の制作にあたって、下山監督は自身の会社であるテンフィルムにスタジオを設け、Mac ProとFinal Cut Proで自ら編集するという手段を選んだ。その理由を、下山監督は次のように語る。「監督というのは、物事を『決める』のが仕事であり、スタッフを指揮するのが仕事です。編集室を借りて、編集マンに指示するといったやり方では、時間単位でコストもかかるため、いったん決めたことを覆すのは難しい。でも、自分のスタジオで自分がMac Proで編集するなら、好きなだけ試行錯誤ができる。自分の睡眠時間さえ削れば、いくらでもクリエイティブな作業の時間を増やすことができるのです。僕自身で編集するということは、自分はクリエイターでもあり、最初の観客でもある。自分という観客を楽しめませるために、とことんクリエイターとしての力を発揮できる。それが最大の魅力です」(下山監督)。

Mac ProにはAJAのKONAカードを装着、500GBのハードディスク4台を搭載してRAID構成とした。「本来なら、サーバを入れたり、ディスクをミラーリングしたりといったことも考慮しなければいけないのでしょうけれど、購入の際にアップルの担当の方から色々アドバイスを受けてこの構成に決めました。当初オフラインだけのつもりだったのですが、Macに詳しい技術スタッフから、『ここまで揃えたのならオンラインもいけるんじゃないか』と言われたのです。使ってみると、720pでカラコレをやってもレンダリングもかからない。DVCPRO HDのデータのまま、オフライン感覚で編集していたら、完パケまで出来てしまったという感じです。本当に驚きました」(下山監督)。

「真夜中のマーチ」の撮影には、メインカメラとしてパナソニックのVARICAM、サブカメラとしてパナソニックのP2camを2台、合計3台を使用した。P2のデータは現場でLaCieのディスクへ、VARICAMのデータはFireWireでMac Proに取り込んだ。「DVCPRO HDのコーデックとFinal Cut Proは相性が抜群で、P2カードのデータをハードディスクにコピーするだけでいい。テープで撮った素材をMacに取り込み編集する場合、通常のドラマでは約一週間程度かかっていましたが、今回3〜4日は短縮できましたね。これは大いに助かりました」(下山監督)。

 
 
 
 
 

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