映画監督 下山天:
Mac Proが切り開くHD編集の
新たなスタイル
SDと変わらない感覚でHD編集
下山監督が最初にMacに出会ったのは、今から10年ほど前、30歳を過ぎた頃だった。「最初の半年は、ネットにつないでメールを読むにも四苦八苦でしたが、そのうちPhotoshopで、画面に出す文字などを自分で作り、スタジオに持っていくようになりました。そしてマシンスペックがどんどん上がり、新しいソフトウェアが出てくるたびに、自分自身の手で様々なものを作り出せるようになっていくのが、僕にとっては純粋に喜びだったのです」(下山監督)。
今回導入したMac Proは下山監督にとって5台目のマシン。ノート型のMacも現在使用しているPowerBookで3台目だと言う。「Final Cut Proを使い始めたのは5年くらい前からですが、予算の少ないミュージックビデオなどは、絵完パケまでFinal Cut Proで作って、それをDVテープで編集所に持っていくということもやっていました。特にここ数年はノートパソコンを使う機会が増えていますね。2年前に作った映画『SHINOBI』は撮影自体はフィルムだったのですが、現場には毎日のようにデジタルのテレシネ素材がminiDVで送られてくる。それをPowerBookのFinal Cut Proで編集して、東京の編集部とやり取りしていました」(下山監督)。現在愛用しているのは、1GHzのPowerBook 12inch。自宅からスタジオ、クライアント先に行くときにも持ち歩き、時間を見つけては編集している。
しかしMacでの編集環境と、編集スタジオのインターフェイスにはまだギャップがあると下山監督は言う。大手の編集スタジオは今もテープ編集が中心。せっかくFinal Cut Proで編集しても、そのデータが活かせないことも多い。「ドラマW」の2作目「アウトリミット」もオフラインはすべてFinal Cut Proだったが、最終的にはスタジオでのテープ編集となった。
ジレンマを感じつつもMac Proの導入を決断したのは、CPUがインテルになったこと、Final Cut Proの最新バージョンがDVCPRO HD/P2対応になったことで、HDの編集にどこまで使えるのかを自身の目で検証したかったからだが、導入の効果は想像以上だった。「当初、思い通りに使えるようになるまで一年くらいはかかるだろうと思っていました。ところが、Mac Proを導入してわずか3ヶ月で『真夜中のマーチ』の完パケまで作れた。Mac Proのパフォーマンスはすごい。SDの時と同じことが、まったくストレスを感じないでできるんですから」(下山監督)。
新しいワークフローで劇場映画を作る
「真夜中のマーチ」でHD編集の感覚をつかんだことで、ミュージックビデオ(MV)の制作ワークフローにも良い影響を及ぼした。「MVの場合は、スタッフの人数が少ないので、僕自身でカメラマンもやるのですが、P2camとMac Proですっかり変わりました。撮影したその日に、カードからそのまま映像を取り込んで、ハイビジョンのまま編集できる。編集が終わったら、またP2カードかハードディスクにデータを入れて編集所に持っていける。今作っているランクヘッドというグループのMV「きらりいろ」は、僕にとっても、P2camで撮影しすべての作業をMacで行った初めての作品になります」(下山監督)。
ランクヘッド PV「きらりいろ」
下山監督は、Mac Proによる新たなノンリニア編集環境に大きな可能性を感じている。「今は映像にしても、音楽にしても、CGにしても、皆それぞれ別々の場所で作っている。それを僕自身が編集することで、一点につながるんです。みんなが一つの場所に集まって映画を作っていた、昔の映画スタジオのような世界が取り戻せるんじゃないか、と思うのです」(下山監督)。
「長い作品を撮ると次はMVのような短いものがやりたくなる。MVを撮ると、今度は映画が撮りたくなる。いつもその繰り返し」と語る下山監督が次に目指すのは、テープレスで劇場公開映画を作ることだという。「『真夜中のマーチ』をやってみて、テープレスでいけるという確信が持てました。次の映画は、VARICAMで撮影して、納得がいくまで自分のスタジオで編集することになっています。アクションではなくハートフルな群像劇。それを、デジタルのワークフローで作りたいですね」(下山監督)。
そんな下山監督の2005年劇場公開作品、映画「SHINOBI」は、ヨーロッパやアジア各国でも公開されており、2007年にはフランス、イギリス、韓国、インドなどでの公開も予定している。また、4月にはドーヴィルアジア映画祭からの招待を受け、下山監督自身もキャンペーンのため渡欧することになったと言う。世界に向けて歩みだした下山監督の最新作「真夜中のマーチ」は、2007年4月15日午後8時、WOWOWで放映される。こちらも要注目である。



