小島淳二(teevee graphics):
Macによるショートフィルム制作の
ワークフロー

プロユースのソフトが充実するMac

現在でこそPower Mac G5でFinal Cut Proを自由に操る小島氏だが、小島氏の会社teevee graphicsは、元々Windowsベースの編集システムを組んでいたという。なぜ、今回のHD編集システムにMacを選んだのか、その理由を聞いてみた。「以前は、映像を非圧縮で取り込むためのボードなど、Windows対応製品が先行していました。また、プロユースの映像編集ソフトも、Windows用の方がMac用よりも充実していたのです。ところが、ここへ来て状況は逆転しました。今はMacの方がプロ向けのソフトが充実しているし、マシン本体とOSとアプリケーションがすべてアップル製なので、非常に安定している。だからこそ、Macを選んだのです」(小島氏)。

とはいえ、一足飛びにWindowsからMacに移行したというわけではないという。「個人的には10年くらい前から、Macユーザなんですよ。仕事にMacを使うようになったのは、Final Cut Proが登場してからです。DVで撮影した映像を取り込んで、編集するところから少しずつFinal Cut Proを使い始めました。撮影から編集、仕上げまですべてHDという作品は今回の『日本の形』が初めてですが、これまでも少しずつMacを使ってきていたので、スタッフにも大きな戸惑いはありませんでした」(小島氏)。

また、Final Cut Proを使えば、撮影現場でMacに映像を取り込める。現場で編集もできるし、それを持ち歩くこともできる。そんな機動力の高さもMacベースの編集システムの大きな魅力だと小島氏は語る。

ミュージックビデオやCM制作にも変化の波

小島氏の本業は、ミュージックビデオやコマーシャル、テレビ番組のオープニングなどのディレクションである。そんな小島氏の目から見ても、プロの映像制作ワークフローは着実に変化しつつあるという。「ミュージックビデオ(MV)の世界では、Final Cut Proを使って監督自身が編集するというケースが増えていますね。以前に比べると、音楽業界全体がMVにかける予算が減る傾向にあることとも関係していると思います。コストをかけずに高いクオリティの作品が作れるというのは、Macベースの編集システムの魅力だと感じます」(小島氏)。

コマーシャルの世界は、また少し事情が異なるようだ。「コマーシャルでは、どんな機材で撮影するか、編集をどうするかといったことは、監督であっても自分だけの意見では決められないことが多いです。現在は、地上デジタル放送の受信機の普及率がまだ約30%程度ということもあって、コマーシャル制作のワークフローのHD化は、あまり進んでいませんね」(小島氏)。

そんな状況で、NAMIKIBASHIとして、本業よりもひと足先にフルHDでの制作を経験した小島氏。成果はあったのだろうか。「カットをつなぐのは楽ですよ。Final Cut ProはHDにも対応していますから。でも、CGやアニメーションはデータ量が増える分、マシンにかかる負担が重い。時間もかかることがわかりました。それでも、HD映像の仕上がりの美しさというのは、本当にかっこいいと思いますね。斜めの線がピシッとジャギーひとつなく決まるのは気持ちいいほどです」(小島氏)。現在使用中のPower Mac G5より、高いCPUパワーを持ったMac Proには大きな期待と関心を寄せているという。

さらに広がるNAMIKIBASHIの世界

NAMIKIBASHIとしての活動はとても刺激的だと小島氏は語る。「NAMIKIBASHIの作品作りには、何の制限もありません。使う機材も自分で決められますし、宣伝する製品やアーティストのイメージを崩さないようにといった気遣いも必要ありません。ひとつのテーマについて小林君と共に考え、彼が文字コンテを書き、それを僕が絵コンテにする。撮影の最中にも、新しいアイデアが浮かんだらすぐそれを反映できる。編集して、ナレーションを入れて、また小林君と意見を交換する。作品を発表すると、映画祭への出品やテレビ放映といった思わぬ展開が広がる。それがおもしろいですね」(小島氏)。

「今後は、NAMIKIBASHIとして企業シリーズの第二弾を作りたいと思っています。第一弾の『SAKURA WONDERFUL JET』は、僕と小林君が架空の航空会社のオーナーという設定で作った作品で、その航空会社のサービス紹介ビデオになっています。第二弾はその会社のグループ企業という設定で、他の業種の企業を紹介するビデオになる予定です」(小島氏)。フルHDでオリジナルショートフィルムを発表するNAMIKIBASHIのさらなる展開、そして小島氏の今後にも要注目だ。

 
 
 
 
 

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