t.o.L:
Macが実現する複合的な表現

数奇な運命を背負ったパンク・キャット『TAMALA』を主人公にしたスペース・ファンタジー、映画『TAMALA2010 a punkcat in space』。2002年の公開当時、その斬新なストーリーや映像表現、ダークな世界感は、映画やアニメーションの枠にとどまらず、デザインやアートの世界でも話題となった。TAMALAの物語は「TAMALA2010 PROJECT」として音楽、エキシビション、ビジュアルブック、マンガ、キャラクターグッズなど多方面へと展開。国内での映画公開後にはヨーロッパ、北米と巡演し、カナダファンタジア映画祭審査員部門最優秀アニメ賞/観客部門最優秀アニメ賞をはじめ、世界各国の映画祭で絶賛された。そして2007年、いよいよTAMALA2010 PROJECTが本格的に再始動する。そのカギを握るのは、前作から引き続き、監督・脚本・音楽のすべてを手かげているアーティストユニットのt.o.Lだ。

作品を愛する人々に後押しされて再始動

TAMALA2010 PROJECTの新たな展開として制作されたのは、DVD作品集『「TAMALA ON PARADE」by t.o.L 』(以下、TAMALA ON PARADE)と、iTunes Storeでも配信中の『MARCHING TIME/t.o.L featuring Barzile』(以下、MARCHING TIME)の2作品。「TAMALA ON PARADE」は、t.o.Lによる新作アニメーション「TAMALA ON PARADE」を中心に、小原秀一監督によるショートストーリーを含む最新のアニメーション作品だ。一方のMARCHING TIMEは、音楽ユニットとしてのt.o.Lが見出したヴォーカリスト、Barzileをフィーチャーした「TAMALA ON PARADE」のテーマソングとなっている。

世界的に高い評価を受けた「TAMALA2010」の公開後、目立った動きが見られなかったTAMALA2010 PROJECTだが、制作から4年以上を経た今、プロジェクトを再びスタートさせた経緯についてt.o.Lのkay氏はこう語る。

TAMALA2010 PROJECTを再開させたt.o.Lのkay氏。

TAMALA2010 PROJECTを再開させたt.o.Lのkay氏。

「TAMALA2010では音楽も作って、グッズも監修し、広告のディレクションも自分たちで手がけました。TAMALAは欧米でも人気が出て、海外の映画祭に呼んでいただいたり、審査員も任されたりして。そんな忙しい毎日を過ごしているうちに、魂がどこかに行ってしまったような状態になったんです(笑)」。

kay氏の言葉からは燃え尽きたとも感じ取れるものがあるが、それでは一体何が活動再開の原動力となったのだろうか。「TAMALAやt.o.Lというユニットが必要とされている時に、もう一度がんばってみようとはいつも思っていました。そして4年もの時間が経った今でも、TAMALAを愛してくれる方がたくさんいることを知ったんです。今回は、そうした人たちに後押しされての再始動ですね。それに、ひょっとしたらタマラ自身がまた暴れ回りたがっているんじゃないかなと」。

久しぶりの登場となるTAMALAだが、今回はどんな物語で楽しませてくれるのか、t.o.Lのもう一人のメンバーであるkuno氏は新作についてこう語る。「以前からのTAMALAの枠組みを使ってはいますが、今回はTAMALAがひたすら踊ったり、そのオーバードライブ感がかわいいんですよ」。また、新作では見る側に楽しんでもらうことを強く意識したとkay氏は言う。「とにかく間口を広げて、皆さんが喜んでくれるTAMALAやグラフィック、音楽をやってみたかったんです。モバイルでもDVDプレーヤでもいいのですが、ぜひ何度でも繰り返し観てほしいですね」。

独特のTAMALAワールドを創り出すt.o.Lのkuno氏。

独特のTAMALAワールドを創り出すt.o.Lのkuno氏。

Final Cut Proは映像制作の世界標準

グラフィックから映像、音楽まで「その場その場で作業を振り分けています」(kuno氏)と言うように、クリエイティブのほぼすべての領域を横断的に動き回るt.o.Lの2人。Adobe IllustratorやAdobe Photoshopでグラフィックを作成・加工し、Adobe AfterEffectsなどで映像化。音楽制作もMacで行うというフルデジタルのワークフローを2002年の段階で確立していたが、MacとWindowsの混在環境だった当時に対して、今回はほとんどの制作過程をMacへとシフトしている。

映像制作全体のワークフローとしては、t.o.Lの2人によるキャラクターや物語の設定のための膨大なメモとスケッチ作業、その交換から始まる。「自宅で猫が幸福そうに寝ている姿を見ながら、絵コンテを描いたり、作品中でパーツとして使用する絵を描いています」とkuno氏。マウスやペンタブレットを使うのではない。「自分たちが描いた絵コンテやアイデアを見ながら、Macを使ってキャラクターとして起こすのが2Dチームの役割。根本健太郎というAdobe Illustratorのプロフェッショナルがいて、絵コンテを見ながらベジェで起こしてるんです」(kay氏)。根本健太郎氏は、TAMALA2010とTAMALA ON PARADEの両作品において、t.o.Lと共にキャラクターデザインを担当している。通常なら原画をスキャンなどしてMacに取り込んでからAdobe Illustratorで作業するのだが、絵コンテを見ながら直接ベジェで起こして行くとは、まさに職人技だ。

仕上がったキャラクターをAdobe AfterEffectsに読み込み、動きの付いたアニメーション素材を作成し、さまざまなエフェクトを適用する。そして最終的な編集作業へと移行していくのだが、ここで今回から本格的に導入されたのがアップルの映像編集ソフトウェア「Final Cut Pro」だ。 Final Cut Proでは編集やカラーコレクションといったポストプロダクションを行い、kuno氏の手描きから生まれ、Macで加工された素材をひとつの作品としてカタチにしていく。t.o.Lとして活動する以前からCMなど映像制作を手がけてきたkay氏は、今回、Final Cut Proを制作に取り入れた理由を次のように述べている。

今回から本格的に導入された「Final Cut Pro」

「半年前にスイスの映画祭に招待されて、映画関係のオフィスやスタジオをいくつか拝見してきたんですが、どこに行ってもFinal Cut Proを使っているんです。これは欧米全般に言えることで、Final Cut Proが映像制作の世界標準になっているという実感がありました。TAMALA2010を制作した当時と比べて、ポストプロダクションの作業はずいぶんと楽になりましたよ」。

 
 
 
 
 

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