t.o.L:
Macが実現する複合的な表現
音楽/映像制作で共通する「素材」の重要性
TAMALA2010 PROJECTにおいて、グラフィックや映像と共にt.o.Lが担う重要な役割が音楽だ。今回の制作にあたり、ワークステーションとしてIntelプロセッサ搭載のMac Proを導入している。Intel搭載Macの印象についてkay氏は「まずは音楽制作からIntel搭載Macを導入してみたのですが、制作上の問題はまったくありませんでした。それどころか、予想以上のパフォーマンスで大きな力になりましたよ」と語る。
「TAMALA ON PARADE」のテーマソングとなった「MARCHING TIME」の制作ワークフローは、プリプロダクションとしてt.o.Lの2人が作曲し、完成した曲をバンドメンバーに渡してスタジオに入るというシンプルなもの。kay氏がギブソン・レスポール・カスタムで曲全体をリードし、kuno氏がKORG MS2000といったアナログ・モデリング・シンセサイザーでサウンドに奥行きを与え、そこにドラムス、ベース、パーカッションのほか、今回はBarzileのヴォーカルが混ざり合っていく。
こうして録音した生音をMacに取り込んで楽曲を構築するスタイルは、まるでスタジオ全体の空気感をサンプリングしているかのようだ。ポストプロダクションとしてDigidesign社のProToolsといったデジタルツールも活用しているが、まずは作品のテーマや求める音を明確にして、そのために必要な機能をチョイスしていくとkay氏は言う。
「バンドで生音を録るのは、偶発的なブレやノイズと言った要素が絶対的に必要だから。ループに聴こえるようなパートも、すべて手弾きなんですよ。そうしてスタジオで録音した素材を、Mac上でうまく音楽の構造に組み込んでいくんです。音楽でも映像でも、ポストプロダクション的な作業がどんどん重要になってきていますが、元になる素材をしっかり作っておかないと納得のいく加工はできませんからね」(kay氏)。
MARCHING TIMEはエポックメイキング
「MARCHING TIME」は絶望的な社会情勢や世相を反映していた「TAMALA2010」のイメージとは異なる部分があるが、これは「TAMALA ON PARADE」のテーマに起因している。「前回のテーマがストリートの暗い部分なら、今回のテーマは移動や旅。『TAMALA ON PARADE』では、移動し続けるTAMALA、歩き続けるTAMALA、そして登場するキャラクターが全員でパレードするんです」(kuno氏)。
「MARCHING TIME」にふさわしい声を探していたkay氏が白羽の矢を立てたのは、Barzileというヴォーカリスト。「彼女に依頼しようと訪ねたら放浪中ということで、ますます今回のテーマにピッタリだなと(笑)。彼女の歌に託せば自然な感じがすると思ったのですが、狙い通り、とても楽しい曲になりました」(kay氏)。
kay氏は「MARCHING TIME」が自分たちにとってエポックメイキングな曲だと言う。「ようやくアーティストとしてのエゴがなくなろうとしてきた時、それにシンクロして生まれた曲が『MARCHING TIME』なんです。自分の中には相変わらず黒々としたものを持っているんですが、この曲はドライブしながら楽しんでもらいたいという気持ちがありますね」。
Macが可能にした複合的な表現
t.o.Lの2人は「いつから使っているのか覚えていない」と声を揃えて語るほど長年のMacユーザだ。「まったく意識しないくらい、常にMacを使ってきたんです。当たり前のようにMacがありました」と言うkuno氏。一方、kay氏は「やっぱりMacのカタチが好きなんですよね。魔力がありますよ。最初はグラフィックで、映像にも向かうようになったのが1994年頃から。初めは映像スタジオにMacで作ったグラフィック素材を持ち込んでいたんですが、Final Cut Proが登場してからはMacで本格的に取り組むようになりました。今では映像制作もMacで一環して作業できています」と述べている。
Macを使って最新技術の恩恵を享受することは、t.o.Lのクリエイティブにも影響を与えている。「Macでの制作はテクノロジーに合わせようとする部分と、本能にまかせて逆行する部分のせめぎ合い。ただ、テクノロジーがレベルアップしていくのは作業が負担が軽くなるぶん、ありがたいと感じています」とkuno氏。Macによって選択の幅が広がり、制作にかける時間も短縮できるようになった反面、「オリジナルの素材がなくても、アプリケーションのみで映像を作れるところまで進んでいるけれど、その中でどうやって自分たちのオリジナルを出せるかということ」とクリエイターユニットとしての確固たるスタンスも持っている。
また、今回の制作からはモーショングラフィック制作ソフトウェア「Motion」も導入しているが、「手描きで続けているアナログな作業もあれば、Motionのような新しいアプリケーションもある。それをミックスできるMacだからこそ、まだ誰もやっていないような表現が生まれる可能性があるんです」と、kay氏は制作環境としてのMacに大きな期待を寄せている。
今後はiTunes Storeでの楽曲のリリース、CD/DVDの発売のほか、Apple Storeでのインストアライブやファッションブランドとのコラボレーション、Webでの動画配信なども計画中だ。「Macがなければ、TAMALA2010 PROJECTのような複合的な表現には取り組んでいなかったと思いますね。Macは単なる表現の道具を越えた存在であり、ツールという境界がなく、自分も一緒に作品の世界へと没入していけるんです」(kay氏)。「絵があって映像があって、音がある。そんな大きな世界観を描きたかった。Macがあれば、それが実現できるんですよね」(kuno氏)。



