WOW: 未来につながるオリジナリティ
HD制作で効果を発揮するMac Pro
Mac Proを中心とした制作環境へと移行したWOWでは、3DCGの制作に「CINEMA 4D」や「Autodesk Maya」を使用。特殊効果など映像の加工には「Adobe After Effects」、社内での映像編集には「Final Cut Pro」、デザイン制作には「Adobe Creative Suite 3」というのが基本的なアプリケーション構成となっている。クロスプラットフォームのアプリケーションであれば従来環境とのデータの互換性にも問題はなく、一部のWindows専用アプリケーションは「Boot Camp」や「Parallels Desktop for Mac」でWindows環境を起動し、Mac Proで直接作業を行うケースもあり、生産性が向上している。
Intel Xeonプロセッサ搭載の8コアMac Proについて鹿野氏は、「コンテンツのHD化によって制作するデータの容量も大きくなっていますが、それでも旧環境からは大幅なスピードアップを体感できました。システムが安定してトラブルが減り、作業も効率化できています。とにかくストレスがなく、使っていて気持ちがいいですね」と総合的に評価している。
Mac ProのパフォーマンスやMac OS Xの安定性、機能性がプロフェッショナルの制作環境に与える効果は大きく、「Macを使うことで、デザイナーの気持ちやモチベーションに違いが出てくることもありますよ」と高橋氏。「これまではWindows環境だけで作業していたスタッフが、突然、Mac Proを使いたいと言い出したんです。Intelプロセッサ搭載のMacならWindowsも使えますし、Mac ProでMacのスピードや使いやすさに目覚めたんでしょうね」。
なお、鹿野氏はMac OS X標準の開発環境「Xcode」に含まれるプログラムツール「Quartz Composer」のエキスパートとしても知られている。Quartz ComposerによるモーショングラフィックはWOWの作品にも反映されているが、こうしたツールや技術を提供するMacを「さまざまな表現を手がけるクリエイターの統合環境としては、最も優れている」と鹿野氏は言う。Mac OS X Leopardのグラフィック技術「Core Animation」にも注目しており、「アニメーターやデザイナーがCore Animationを使いこなしたら、おもしろい表現が生まれそうですね」と最新のMac OS X環境にも期待を寄せている。
Macの魅力はデザインやインターフェイス
WOWのキーパーソンである高橋氏、於保氏、鹿野氏は、クリエイターとして、また1人のユーザとしてMacの存在をこう捉えている。
「Macは学生時代から使っているんですが、自分の可能性を拡張できるアンプみたいなもの。今みたいな作品を作ることができるのはMacのおかげです。誰もが気づかないような部分にまで『新しさ』を内包しているのも、WindowsにはないMacの魅力でしょう」(鹿野氏)。
「書類制作などデスクワークも含めて、ほとんどの作業でMacBook Proを使っています」と言う於保氏は、「Macはデザインのお手本であり、スタンダード。インターフェイスもサウンドも、すべてが洗練されています。コンピュータを使うなら、Macのように気持ちよく使えないと嫌ですね」と語る。
3人の中で最もMacの使用歴が長いのが高橋氏。「会社でもプライベートでも、ずっとMacを使い続けています。新製品が出ると、つい買ってしまうんですよね。僕の場合は経営者の視点としても、新しいことに一番最初にチャレンジする革新さというか、そんなアップルの姿勢に共感しているんです」。
ジャンルを越えた新しい映像表現を追求
WOWはテレビコマーシャルなどのクライアントワークを手がけながら、2006年に公開した「:COLON」に至るまでコンスタントにオリジナル作品を発表し、DVD作品「Motion Texture」ではメディア・アートとしても高い評価を受けている。そして今後の新たな展開の指標となるのが、アートブック「WOW10」だ。
「10周年という節目に、『過去10年の再構築』と『これからの10年』を想像した表現をビジュアルに落とし込んで、1冊の本にしてみようと思ったんです」(於保氏)。これまで100%オリジナルの制作にこだわってきたWOWだが、「WOW10」では服部滋樹氏(graf)、yoshio kubo氏、グエナル・ニコラ氏、田中耕一郎氏(projector inc.)、artless、石渡雅史氏(池坊)と、実にさまざまなジャンルのアーティスト/クリエイターが参加している。
「建築家やファションデザイナー、Webデザイナーなど、この先、深く関わりが出てくるであろう分野のクリエイターに、今後の布石も兼ねて作品を提供してもらいました。これからは、いろんな人たちと交流しながら一緒に作品を作っていきたい、という表明でもあるんです」と、於保氏は「WOW10」で他ジャンルのクリエイターとコラボレートした意図を明かしてくてた。
「あくまでも活動の軸足は映像。ただ、今後は映像を別のカタチで表現したり、今までにないWOWをどんどん見せていけたらと思っています。「WOW10」やロンドンでのオフィスの設立は、そうした考えの現れと言えますね」(高橋氏)。
Macから生まれるWOWのオリジナルワークは、クライアントワークにさらなる磨きをかけ、映像プロダクションとしての活躍の場を広げる「きっかけ」となっている。同時に、表現の新たな可能性を引き出し、世界中のクリエイターとの交流を活性化する「ハブ」としての役割も今後は果たしていく。



