赤羽紀久生【連載】フルデジタルワークフロー入門:第1回
フルデジタルワークフローの概要
連載の開始にあたって
初めまして。グラフィックワーク・コンサルタントの赤羽紀久生です。このたび、グラフィックに関するフルデジタルワークフローの解説を行うことになりました。初心者の方でも理解できるように、わかりやすく進めていく予定です。
さて、クリエイターが使用する道具はMacとともに進化してきましたが、皆さんはそのメリットを十分に手に入れていますか? 見た目はきれいになっていても、収入が増えたり、労働時間が減ったりすることはないという方も多いのではないでしょうか。なぜメリットを得られないのか? それは仕事の進め方を変えないからです。
グラフィックにおける技術やハード/ソフト/ネットワークは成熟しつつあり、完成度の高いものとなっています。その完成度をメリットに転化するには、仕事の進め方=ワークフローを改革しなければなりません。役割と責任を明確化して、すべてのクリエイターが共通の運用ルールに則って作業するのです。そうすれば不必要なトラブルからも解放されます。
本連載では、広告・出版・印刷におけるデジタルワークを体系化して、作業をどのように進めるべきか解説していきます。その内容は、取扱説明書や通販カタログのような企業の社内制作にも適用できますし、広告原稿のデジタル送稿といった不特定多数の標準化でも役立ちます。
すでにフルデジタルのワークフローを実践している方も、これから取り組もうという方も、この連載を通して新たな知識を身に付けていただけるとうれしい限りです。また、古い仕事の進め方でも今のところ支障がない、新しいソフトを勉強しても意味がない、と考えている方には特にお勧めです。
フルデジタルワークフローとは?
フルデジタルワークフローとは文字通り、作業のすべてをデジタルデータで流通させる仕事の方法です。プロフェッショナル向けデジタルカメラが高性能化し、製版フィルムを介さずに直接刷版(さっぱん:インキを乗せるプレート)を出力できるようになったことは、情報の入力から出力までのすべての作業がデジタル処理となったことを意味します。
Macを使うようになって一時期は何でもデザイナーに作業を押し付けたり、デジタルカメラが使われ始めるとフォトグラファーに色変換を求めるような、役割の混乱も見られました。しかし、仕事の流れや責任は工程に基づいて規定するべきで、その工程もアナログ時代とは異なり、デジタルに相応しいものでなければなりません。
また、工程全般において制作環境の整備を行い、原稿のチェックやデジタル送稿にPDFファイルを利用することもポイントとなります。モニタやプリンタを色基準通りに表示したり、感覚的に使って効率よく表現方法の試行錯誤を行うことは、クリエイティビティや生産性の向上に大きく役立ちます。制作環境に左右されずにレイアウトやフォントを維持できるPDFファイルをオンラインで流通させれば、スピーディで確実に仕事を進行できるのです。
グラフィックに関わる各工程は、企画/マスターパーツ作成/デザインワーク/プリプレスワーク/デジタル送稿/印刷に分割でき、各工程は責任を伴う作業として図.1のように構成されます。





