赤羽紀久生【連載】フルデジタルワークフロー入門:第1回
フルデジタルワークフローの概要
色基準やファイル形式がトラブルをなくす
みなさんは、いつも作業を行うときにどのような色基準で仕事を行っていますか? こう聞かれても分からない場合、カラーマネージメントに関する勉強をしたほうがいいのですが、難しく捉えることはありません。色を再現するには基準があって、その基準は色空間として視覚化できることを覚えてください。
RGBやCMYKというカラーモードは色を再現する手法の違いに過ぎず、色空間はそれぞれの再現手法をどのような基準において具体化するか表すものです。Mac OS Xの「ColorSync ユーティリティ」を使うと、立体的に色空間を理解できるので確認してみましょう。例えばプロファイルの項目で「Adobe RGB(1998)」を選び、そのあとで「Japan Color 2001 Coated」を選択すると、右側に描かれている立体図の大きさが異なることが分かります。この立体が色基準で、「CIE L*a*b*」(シーラブ)という絶対的な色の数値を元に視覚化しています。同じRGB値やCMYK値であっても、モニタや印刷条件によってCIE L*a*b*値は異なるのです。

【図.2】「ColorSync ユーティリティ」は、「アプリケーション」フォルダ内の「ユーティリティ」フォルダに入っている。左上の「プロファイル」の項目を選べば、その色空間が表示されてカーソルで回転できる(本来は重ねて表示できないが、この図では合成している)。
*クリックで画像を拡大できます
この色基準を理解して、アプリケーションのカラー設定とモニタやプリンタの調整を行えば、色は一致することになります。一般的には、撮影した画像などは「Adobe RGB(1998)」を色基準とし、印刷原稿用に「Japan Color 2001 Coated」や雑誌広告基準カラーに色変換します。このように、作業に関わるすべての人が汎用性のある色基準を運用すれば、同じ色が再現されてトラブルが起こるケースは少なくなります。
また、撮影画像やイラストレーション等の作業に応じて、適切なファイル形式を選択することもトラブルを回避するためには欠かせません。撮影画像ならば一般的にはTIFF形式が推奨されますが、撮影場所からオンラインでアップロードする場合などはPhotoshop PDF形式を使用する方法もあります。特にデジタル送稿ではファイル形式など決められた運用ルールを守り、ミスのないファイルを作成しなければならず、そのために正確な知識を身に付けることが必要なのです。
フルデジタルの5つのメリット
フルデジタルワークを行うには必ずしも最新の制作環境が必要というわけではなく、適切なスキルを持っていれば可能です。けれども、古い環境では遠回りすることになり、試行錯誤や修正を実行しにくく、結果として余計な人件費や外注費が掛かってしまいます。それに対して理想的なワークフローを構築すれば、人材の教育や制作環境での投資もすぐに回収でき、デジタル化において挙げられるスピード/コスト/クオリティの3つのメリットが簡単に手に入ります。
さらにグラフィック産業全体の改革が進めば、タイムリーとフレキシビリティというメリットも獲得できます。印刷原稿というデジタルデータを一方通行で自由に流通させることで、必要とされる情報を最適なタイミングで、一人ひとりに紙メディアで提供できるようになるのです。これをグラフィック・コミュニケーションの最適化といい、マーケティングを変革する可能性を秘めています。
次回は感覚的で生産性の高い制作環境について解説していきます。



