赤羽紀久生【連載】フルデジタルワークフロー入門:第3回

トラブルを起こさないデータの受け渡し

マスターパーツの作成という考え方

フィルムや絵の具という目に見える素材が写真やイラストに介在していた時代は、それをそのまま受け渡せば、何の問題もなく次の工程に引き継がれていました。しかし、作業のデジタル化が進展するとともに、具体的な物体が存在しないデータの受け渡しに混乱が見られるようになりました。誰が何を行うのかが曖昧なまま、扱いやすく加工しやすいデジタルデータが流通したからです。

例えば、撮影や画像合成とは絵作りであって、印刷用のデータを作成するための作業ではないのに、フォトグラファーに色変換まで押し付けていないでしょうか。あるいは色基準を理解せずにイラストを描いて、調整を行っていない自分のモニタやプリントに印刷側で刷り色を合わせるように言ってはいないでしょうか。

間違ったやり取りは作業効率を悪化させるだけでなく、無駄なコストを増やし、仕事の品質も低下させます。写真やイラスト、文章といったパーツは、印刷物やWebページなどにマルチユースすることを前提として、一旦完成させなければ責任を果たせません。今回は、データの受け渡しでトラブルを起こさない、適切なファイル形式や色基準を「マスターパーツの作成」におけるルールとして示します。

撮影/合成画像のチェックとデジタルデータの納品

デジタルカメラは、一般向けではかなり以前から普及していましたが、近年になってプロユースに十分応えられる品質の撮影ができるようになりました。そのため報道から出版や広告に至るまで、あっという間にデジタルカメラでの撮影へと移行し、画像合成などもMacとAdobe Photoshopによって手軽に行えるようになっています。撮影や画像合成をどのように行うかは、フォトグラファーやレタッチャーが判断することですが、データの受け渡しには一定のルールが必要です。また、そのルールは唯一絶対のものではなく、撮影内容や進行状況によって柔軟に対応できなければなりません。以下の項目は、私が推奨している撮影画像や合成画像の受け渡し方法です。

1: ロケ先やスタジオなどの撮影場所以外で画像をチェックする場合は、Photoshop PDF形式で解像度を下げて送信する。

Adobe Photoshop CSや同CS2で変換したいファイルを開き、メニューバーの「ファイル」から「自動処理」→「PDFスライドショー」を選ぶとPDFで書き出せる。出力オプションの設定内容に応じて、解像度や圧縮方法をコントロールする。
*クリックで画像を拡大できます

2: 画像をチェックする際や納品するファイルの色基準には「Adobe RGB(1998)」を使用する。

3: 納品する画像の解像度は、撮影段階のオリジナルから変更しない。

4: アンシャープマスクはプリプレスワーク(印刷を行う前段階)の役割なので適用してはいけない。

5: ファイル情報(メタデータ)に撮影者などを記入。

6: 色基準を示すためにICCプロファイルを埋め込む。


ファイルの保存時には「カラープロファイルの埋め込み」にチェックを入れておく。
*クリックで画像を拡大できます

7: ファイル形式はTIFF形式。RAWデータは事前の取り決めがない限り使用しない。

8: 色見本を添付する場合は「Adobe RGB(1998)」を色基準としたインクジェットプリンタで出力する。

9: 色変換したデータを納品する場合は印刷物の色を保証し、その責任を負うものとする。

10: 画像をフィルムや紙に出力したものを「原稿」としてはいけない。品質が劣化する上、カラーマネージメントに支障をきたす。

11: Photoshop PDF形式でZIP圧縮を行い、1ファイルで納品する方法もある。

12: 合成画像などの解像度はできるだけ高く保持し、レイヤーやマスクを活かす場合はPhotoshop形式で納品。

 


 
 
 
 

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