赤羽紀久生【連載】フルデジタルワークフロー入門:第3回

トラブルを起こさないデータの受け渡し

イラストレーションの確認とデジタルデータの納品

撮影とはレンズを通した光学的な入力ですが、イラストレーションは人為的な情報の入力作業です。そのため、制作者の手法によっていくつかの選択肢が発生します。Adobe Photoshopのようなラスターデータで描くのか、Adobe Illustratorのようなベクター画像で描くのか。マルチユースを前提に「Adobe RGB(1998)」を色基準とするのか、枚葉オフセット印刷を前提に「Japan Color 2001 Coated」を色基準とするのか。色基準やファイル形式を選択して作成できるので、撮影画像よりも体系化された受け渡しのルールを身に付けなければなりません。

【ラスターデータの場合】
1: 画像のチェックはPDFで行う。

2: 色基準は「Adobe RGB(1998)」か「Japan Color 2001 Coated」。

3: 画像解像度はマスター画像を想定した値(最大使用サイズにおいて350ppi以上)を基本とする。

4: アンシャープマスクはプリプレスワークの役割なので適用しない。

5: ファイル情報(メタデータ)に制作者名などを記入。

Adobe Photoshopのメニューバーにある「ファイル」から「ファイル情報」を選び、XMPというフォーマットにテキストで各種情報を入力すれば、メタデータとしてデータベースなどで利用できる。
*クリックで画像を拡大できます
 

6: 色基準を示すためにICCプロファイルを埋め込む。

7: ファイル形式はTIFF形式か、レイヤーやマスクを活かす場合はPhotoshop形式とする。

8: 色見本を添付する場合、「Adobe RGB(1998)」か「Japan Color 2001 Coated」を色基準として出力。

9: 色変換したデータを納品する場合は印刷物の色を保証し、その責任を負うものとする。

10: 画像をフィルムや紙に出力し、納品用の「原稿」としてはいけない。品質が劣化する上、カラーマネージメントに支障をきたす。

11: Photoshop PDF形式でZIP圧縮を行い、複数の画像をひとつのファイルにする方法もある。

一方、ベクターデータで受け渡しを行う場合、ラスターデータの1、2、5、6、8、9、10は共通ですが、特有のルールもあるので覚えておく必要があります。

【ベクターデータの場合】
1: フォントを使用している場合、アウトライン化したほうがトラブルを避けられる。ただし、イラストマップのように内容次第ではテキスト情報が重要なこともあるので、事前に打ち合わせを行う。

2: ファイル形式はIllustrator形式。透明効果がさまざまな機能に利用されているので、Illustrator EPS形式は使用しない。

ファイルはIllustrator形式で保存。「Illustrator オプション」で「ICCプロファイルを埋め込む」のチェックも入れておく。
*クリックで画像を拡大できます
 

3: 内容を確定したあとで、フォントを埋め込んだPDF1.4形式で納品する方法もある。

ファイル名の正しい付け方

メールやWebブラウザを使って、オンラインでファイルをやり取りすることが当たり前になっていますが、ファイル名の重要性を十分に認識して行っているでしょうか。 ネットワークで経由するサーバやコンピュータの環境によっては、和文や記号が文字化けする場合もあります。ファイル名が文字化けすると、意思疎通ができなかったり、リンクが切れてしまいファイルを開けなくなったりします。ファイル名は英数字(1バイト)と「_ 」(アンダーバー)のみで記述し、Mac OS間のやり取りであっても必ず拡張子を付けましょう。

マスターパーツのフォーマット

マスターパーツとは撮影したままの画像や描いたままのイラストの場合もありますが、基本的には色を補正したり、ファイル形式を変更した完成品を規定します。写真やイラストレーションなどの元ファイルは、マスターパーツとして規定することで流用しやすくなりますが、必ずしも固定されたファイル形式や色基準とする必要はありません。パーツの内容に応じて柔軟に判断したほうが、使い勝手は良くなります。以下はマスターパーツのフォーマット例。

ラスターデータによる角版写真
●色基準:Adobe RGB(1998)
●ICCプロファイル:埋め込み
●画像解像度:撮影画像のまま
●ファイル形式:TIFF

ラスターデータによる切り抜き写真
(レイヤーを活かす場合)

●色基準:Adobe RGB(1998)
●ICCプロファイル:埋め込み
●画像解像度:撮影画像のまま
●ファイル形式:Photoshop

ラスターデータによる角版イラストレーション
●色基準:Adobe RGB(1998)/Japan Color 2001 Coated
●ICCプロファイル:埋め込み
●画像解像度:オリジナル原稿のまま
●ファイル形式:TIFF

ラスターデータによる切り抜きイラストレーション
(レイヤーを活かす場合)

●色基準:Adobe RGB(1998)/Japan Color 2001 Coated
●ICCプロファイル:埋め込み
●画像解像度:オリジナル原稿のまま
●ファイル形式:Photoshop

ベクターデータによるイラストレーション
●色基準:Adobe RGB(1998)/Japan Color 2001 Coated
●ICCプロファイル:埋め込み
●ラスタライズする場合の画像解像度:最大使用サイズにおける350ppi以上
●ファイル形式:Illustrator/Photoshop

3Dソフトから書き出したイラストレーション
●色基準:sRGB
●ICCプロファイル:埋め込み
●画像解像度:オリジナル原稿のまま
●ファイル形式:Photoshop

次回は、クリエイティブな試行錯誤と途切れることのない作業について解説します。

 
 
 
 

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