赤羽紀久生【連載】フルデジタルワークフロー入門:第4回

クリエイティブな試行錯誤と途切れない
デザインワーク

いつどこからでも後戻りできる無駄のない作業

ここまでの話は全体的な操作に対するメリットですが、ここからはアプリケーションの機能をどのように活かすのか、詳しく掘り下げていきます。いくつかポイントがありますが、デザインとは効果を適用する行為であること。そして効果はレイヤーや機能によって視覚的に追加しているだけで、元のファイルそのものには変更が加えられていません。そのために、作業のどの段階でも自由に後戻りできることが基本的な考え方です。

以下に例を示しますが、この作業方法だけではなく他のアプリケーションや機能でも同様の手法をとることができ、ファイルに変更が加えられれば、そのファイルが配置してある原稿にもすぐに反映されます。こうした後戻りする方法を身に付けて、ストレスのない作業を実行してください。特に、Illustrator CS2でデザイン原稿を作成するのではなく、InDesign CS2を使用するとより快適に作業を進められます。


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1: テキストやオブジェクトにグラフィックスタイルを適用し、表現手法を瞬時に変更する(Illustrator CS2)。


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2: 調整レイヤーを使用して画像の色調補正を行ったり、レイヤースタイルで加工する(Photoshop CS2)。

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3: テキストに文字スタイルを適用して、その設定を変えることで色やフォントを一括して変更する(InDesign CS2)。

デザインワークとプリプレスワークの連携

デザインワークが何を指すか、デザイナーの責任範囲はどこまでか、といったことで日々トラブルを起こしていませんか。よくあるのが完全データだといいながら、実際にはそのまま出力できない不完全なデータになっているというケース。あるいは、完全データだからファイル通りに出力すれば何の問題も起きないのに、出力側で勝手にスミ100%をオーバープリントにしてしまうことも多く見られます。

責任範囲は、第1回の「フルデジタルワークフローの概要」を参照していただくとして、なぜこのようなことで混乱してしまうのかを考えてみましょう。アナログ時代にはフィルムが介在して版を製作していたので、撮影したカラーフィルムを製版部門が4版に「色分解」していました。一方、デジタルワークではデータをコンピュータで簡単に操作できますが、正確な知識や技能を伴って異なるカラースペースに色変換できるデザイナーはあまりいません。また、広告のように制作アイテムが数10から100を超える場合、すべての作業をデザイナーがこなせるわけはありません。ひとつのミスも許されない完全データですから、几帳面で緻密な性格も必要でしょう。

コンピュータは何でもできる道具だから、きちんと理解できない経営者や管理職は分業を望まないかも知れません。確かに、制作環境を整えてスキルを身に付ければ、業務によってはデザイナーが1人で完全データの作成まで行うほうが適している場合もあります。けれども、これまで製版に携わってきたプリプレススタッフが色変換を行ったり、校正を出力したり、最終的な完全データを書き出すほうが無駄がない上に品質も高くなります。

つまり、ワークフローとして適切に分業を行い、プリプレスワークがデザインワーク側に寄り添って連携することが重要なのです。自由な試行錯誤が伴ったクリエイティブな業務と、それを支える確実なプロダクト業務の両立が、今後さらに進展するパーツやコンテンツのマルチユースには欠かせません。撮影やイラスト描画によるデジタルデータをアイテムに応じた色基準通りに色変換し、デジタルプルーフを出力するのはプリプレスワークであり、デザインワークとは異なる職種として確立する必要があります。そのまま出力して印刷できる間違いのない完全データを流通させれば、スピード/コスト/クオリティのすべてにおいて競争力を持てるのです。

次回は、PDFファイルを中心とする情報共有について解説します。

 
 
 
 

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