赤羽紀久生【連載】フルデジタルワークフロー入門:第5回
適切なPDFの作成とコラボレーション
PDFファイルを中心とする情報共有
ビジネスシーンでは「情報共有」という言葉が頻繁に使われますが、これはITによって意思疎通を図ることが効率アップには欠かせないという現れです。グラフィックワークにおいても意思疎通は重要で、広告制作や出版編集の作業効率に大きく関わってきます。とはいえ堅く考える必要はなく、何度も行われるチェックの無駄と間違いをなくす手法と捉えるといいでしょう。
ビジュアルの共有が何よりも重要なグラフィック関連業務では、フォント・画像・レイアウトを損なうことがあってはいけません。また、作業の無駄をなくすためにはネットワークの活用も前提となります。そのため、制作物はPDFファイルでの情報共有がワークフローの柱となります。仕事の最初から最後まで、担当者の端から端まで常にPDFファイルを流通させることが効率アップの秘訣。個々のパーツのチェック、レイアウトされた原稿のチェック、完全データとしての送稿、掲出した印刷物のデータベース化とすべての領域で活用できます。
さらに最近では、PDFをカタログとしてWebに掲出するだけではなく、iTunes Storeで配信を行ったり、動画や3D画像を埋め込むといったクロスメディアが進行しているので、より正確で深い知識が求められます。
プロとして必須の基礎知識
PDF(Portable Document Format)とは、グラフィックソフトのベースとなっているPostScript言語を発展させたファイル形式です。PDFの作成や表示は基本的にはOSに左右されないため、クリエイティブな業務から事務的な業務まで対応できますが、複雑な表現でも正確に再現しなければならないグラフィック制作物に適しています。特にAdobe Acrobat Professionalを使用すると、プリフライトを行ったり、注釈を付けた状態でのやり取りも可能になるので、PDFの価値はさらに向上します。
実はPDFには、ファイルの作成方法や付加する情報によって構造が異なるバージョンが存在します。単純に紙と同じような役割のPDF 1.2から、和文フォントの埋め込みに対応したPDF 1.3、透明を保持するPDF 1.4、レイヤーを保持するPDF 1.5、3Dを組み込めるPDF 1.6、そして最新のPDF 1.7まで進化してきました。また、印刷原稿となる完全データを一方通行で送るためにPDF 1.3に制限を加えた国際的な標準規格「PDF/X-1a」は、デジタル送稿に利用されています。
PDFの作成方法と設定
PDFはゼロから作成するものではなく、他のアプリケーションのファイルを変換して作成します。Adobe Creative Suite 2では、Adobe Photoshop CS2/Adobe Illustrator CS2/Adobe InDesign CS2から直接PDFを書き出す機能を備えています。また、Adobe Acrobatがインストールしてあれば、どんなアプリケーションでもプリント機能を経由して作成できます。Mac OS Xの場合はシステムがPDFをサポートしているので、AdobeのアプリケーションがなくてもPDFを書き出せます。
PDF作成時には画像解像度や圧縮方法、色変換に関して細かく設定できるので、ファイルサイズを小さくしたり、画像を高品質に保持することが可能です。その内容をプリセットとして保存すれば、次回からは用途に応じて選択するだけなので手間もかかりません。しかも、Adobe Creative Suite 2では、各アプリケーションで設定を共有できるので非常に簡単です。この設定を理解すれば古いバージョンでも同様に対応できますが、Adobe IllustratorなどからPostScriptファイルを書き出して、Adobe Acrobat DistillerでPDFに変換しなければならないので遠回りになります。
PDF作成のポイントは以下の通りです。
1: フォトグラファーやデザイナー、プリプレス等の役割に応じた設定で各自がPDFを作成する。
2: 解像度を下げて1ファイルにまとめ、撮影現場からインターネットで送ってチェックできる。
3: 細かいイラストや図面などをチェックする場合も、PDFなら確実に再現できる。
4: 文章をチェックする場合にもWordファイルなどではなく、PDFを活用する。
5: 原稿の用途がカンプなのか、それとも印刷を前提とするのかで、PDFのバージョンや画像の圧縮設定をカスタマイズする。
6: カラー設定で選んだ「Japan Color 2001」などの色基準に則ったファイルを作成する。






