茂手木秀行【連載】フォトグラファーのためのデジタルワークフロー:第1回
フルデジタルワークフローに移行するために
デジタルカメラにしただけではかえってマイナス
フイルムからデジタルに切り替えようと思ってらっしゃる方は多いことでしょう。ですが、単にカメラをフイルムからデジタルカメラに置き換えただけではかえってマイナスです。きっとフイルムで培われたあなたの大切なワークフローを崩してしまうだけになってしまうことでしょう。
しかし、デジタル化は難しいことではありません。デジタル化のメリットは印刷結果をコントロールできるということに尽きます。この目的に合った正しい機材と写真を愛する心があれば恐れるに足りません。まずはデジタルを正しく理解しましょう。
デジタルにはいくつかの罠があります。
1. フイルム代がいらないからといってたくさんシャッターを切っていませんか?
多くのシーンを撮影するのはとても良いことですが、漫然と多くのショットを撮ってはいけません。ベストショットをセレクトするのに本当に多くの時間を費やさねばならなくなってしまうからです。大型カメラを扱うように、ワンショットごとに丁寧に撮影しましょう。

同じようなショットをたくさん撮ってしまうとセレクトするだけでも大変な作業になってしまいますし、データ量も多くなりハードディスクを圧迫します。丁寧な撮影を心がけましょう。
2. デジタルで加工をすれば後でどうにでもできると思っていませんか?
確かに画像加工で多くのことができます。しかし、例えば白トビを起こしてしまったデータを元に戻すにはイラストとして描いていくしかないのです。つまり、写真として元に戻すことはできないのです。

モデル:Reiko Takahashi
01は肌をキレイに見せるために露出を明るくしたカットですが、ヒストグラムを見てください。Rチャンネルのみが飽和してしまい、肩のハイライト部分がバンディングしています。これを直すとなると大変です。02のようにまずはRGBすべてがレンジに収まるような露出にします。それからトーン調整をしたのが03です。透明感があってバンディングのない滑らかな肌表現ができました。
3. デジタルカメラ背面の液晶で画像を見るととてもきれいなのに、パソコンで見ると印象が違うと思いませんか?
カメラ背面の液晶は正しく見せるというよりも、ぱっと見てキレイに見えることを目的に作られています。現場でクライアントに写真を見せるときは、信頼できるノートパソコンを持って行きましょう。

デジタルカメラの背面液晶モニターでは、ヒストグラムを確認しましょう。
4. デジタルだからフィルタ補正はいらないと思っていませんか?
デジタルカメラはとても鋭敏なセンサーです。そして、基準となるのはデイライトフイルムと同じ5500Kの光です。光源が5500Kの時、RGBそれぞれのチャンネルの出力値が揃うことで、最良の画像を生み出してくれます。例えば、あなたの撮影ワークフローがタングステンなら、デイライトフイルムで撮影したようにブルーのフィルタをレンズにかけてあげてください。
さらにセンシティブな問題があります。光源が何であれ多灯ライティングを行うとき、一つ一つのライトの色温度がそろっていないと、場所ごとに色が変わってしまいます。それだけ鋭敏なセンサーなのです。一灯ごとに色温度を調整しなければなりません。

左:標準光源D55とタングテンランプのスペクトル図。D55は真昼の太陽光の数学的表現で、色温度は5500Kです。タングテンランプを使う場合も、フィルターを使って5500Kに近づけましょう。デジタルカメラのセンサーは5500Kの光源を使ったときに最も効率よく色を再現できるのです。
右:Broncolor(アガイ商事:http://www.agai-jp.com/)なら、フィルターを使わずとも閃光時間を変えることで色温度を変えることができます。多灯ライティングの時は、ライティング完成後に色温度をそれぞれ合わせるのが正しい方法です。
5. 高画質にしたいならRAWデータで入稿すればいいと思っていませんか?
最近そんな声を聞くこともありますが、それは誤解です。指定されたプロファイルでTIFやJPGなど一般的なフォーマットに現像し、ゴミ取りをしてから納品するのがエチケットです。RAWデータは未現像のフイルムと同じです。そこには、あなたの表現意図はまだ埋め込まれていないのです。また、ゴミ取りの作業も大変ですが、ゴミの出にくい機材を使うこと、マメにゴミ掃除をすることでほぼ解決できます。機材のメンテナンスに関わる部分も、プロフェッショナルの仕事なのです。


