茂手木秀行【連載】フォトグラファーのためのデジタルワークフロー:第1回
フルデジタルワークフローに移行するために
モニターの正しい設置環境について
次にモニターの設置環境を整えましょう。一例として、私の自宅のシステムをご覧ください。
Apple Cinema Displayの広いデスクトップは、画像をとても快適に閲覧・編集することができます。左はナナオのColorEdge CG19です。2つのモニターは一致しているので、安心して色を評価することができます。
設置する環境で最も大事なことは、目に見える範囲を無彩色でまとめることです。モニターへの色映りを防ぎ、正しい色を観察するために重要です。本来はすべてグレーが良いはずですが、単色のみの世界は心理的にきつくなるので、三つのトーンで分けています。上部にライトを設置していますが、これは印刷物の評価用で、モニター作業時には消灯します。
この環境を数値で説明してみましょう。一般に推奨されているモニターの輝度は80カンデラ、観察環境の照度は約60ルクスです。上部に設置しているライトは印刷物やプリントを評価する時に使いますが、印刷学会ではD50光源(色温度5000K)、600ルクス、演色指数90以上を推奨しています。演色指数はどれだけ理想光源に近いかを表す数値で、100が理想光源です。手元でこの数値を実現するため、上部に写真撮影用高演色性蛍光灯を設置しているのです。実測値で色温度4700K、約600ルクス、演色指数92となっています。
左が色評価用高演色蛍光灯、右が普通の3波長型蛍光灯
さらに、部屋全体の照明は色評価用高演色蛍光灯に交換しました。じっくり観察する時にはこちらを点灯します。この条件では、4700K、600ルクスで演色指数97を確保でき、ほぼ理想に近い状態になります。ちなみに普通の3波長型蛍光灯の実測値は4900K、演色指数81。色評価用蛍光灯は普通の3波長型蛍光灯の倍近い値段ですが、作業部屋だけでも交換しましょう。
モニターの話に戻ります。モニターの推奨輝度は80カンデラと書きましたが、白色点はどうすれば良いのでしょうか。作業環境に合わせるのが基本です。印刷物やプリントの評価はD50光源下で行うものですから、モニターの白色点もD50に合わせるのが基本です。ですが、撮影時の光源は5500K、D55なのです。しかし、D50とD55は大変近似しており、実際の撮影光源も5000Kから5300K程度です。なので、現実的にはD50でもD55でも、どちらでも良いとも言えます。モニターの白色点をD50に設定した場合、白がやや黄色く見えます。好みの問題もありますが、私はモニターの白色点をD55、ガンマ1.8に設定しています。
いずれにせよ、環境光をしっかりと作った段階でモニターと出力物を見比べながらモニターを合わせ込んで行きましょう。この時忘れてはならないのが、校正設定です。Adobe Photoshopのメニューに「校正設定」というものがあります。これを使って、モニター上で印刷物のシミュレーションを行います。この結果、見える色と出力物が一致すればOKです。
さらにもうひとつ、重要な情報があります。モニターキャリブレーションツールです。高価なモニターも、モニターキャリブレーションツールがなければ宝の持ち腐れになってしまいます。最近では低価格のものも出てきましたが、価格はその精度と機能に反映されています。また、その仕組みによって色彩計と分光測色計に分かれます。仕事に使うのであれば、分光測色計のタイプをおすすめします。Eye-OneやMonacoといった製品が有名です。

私はEye-One Pro Publishという製品を使っています。常に身近において、モニターキャリブレーションだけでなく環境光や現物の分光測色などさまざまな使い方をしています。撮影現場に持っていって、実際の撮影物の色を分光測色することも日常的な使い方です。


