茂手木秀行【連載】フォトグラファーのためのデジタルワークフロー:第2回

デジタル撮影におけるカラーマネージメント

RAWデータで撮影するメリット

次にデータの保存形式について考えてみましょう。JPEGやTIFFというのはデータの保存形式のことです。どちらも非常に一般的な保存形式で、WebブラウザやMac OS Xに付属する画像ビューワーで誰でも閲覧できますが、この2つの形式には大きな違いがあります。それは、JPEGは「非可逆性圧縮」形式であること。TIFFは非圧縮と「可逆性圧縮」形式を選択できますが、重要なポイントは圧縮する際に可逆であるか、非可逆であるかという点です。非可逆性圧縮は圧縮保存時に画質を劣化させ、しかも元の状態に戻すことはできません。一方、可逆性圧縮ではデータを劣化させることなく、圧縮と展開ができます。ただし画像自体を加工すれば、そのぶん必ず劣化することをお忘れなく。

非可逆性圧縮形式であるJPEGデータの場合、名前を変えて再保存するだけで画質は劣化します。ちょっと極端な例をお見せしましょう。今回サンプルに使ったデータを、1回だけJPEGに保存したものと、画像加工などはせずに単に20回の再保存を繰り返したものを並べてみました。

ノイズ比較1
上が20回再保存した画像。下の1回だけ保存した画像に比べてノイズが増え、コントラストがあがっていることがすぐにわかります。
*クリックで画像を拡大できます

さらに仔細に見ると重大な問題に気がつきます。20回再保存した画像では、雲のトーンがバンディングを起こしています。これでは滑らかな階調を持った作品として印刷、プリントすることができません。今回はJPEGの圧縮率を最も高画質になるように設定しましたが、画像加工をしたり、圧縮率を大きくしてしまうと数回の保存で使えない画質になってしまいます。

ノイズ比較2
20回再保存した左の画像は、雲のグラデーションにバンディング(トーンジャンプ)が発生しています。
*クリックで画像を拡大できます

フークフローの効率化につながるRAWの安心感

さて、ここからはRAWデータのお話です。よくRAWデータは未現像のフィルムに例えられますが、フィルムと大きく違う点は、現像後も未現像の状態に戻せることです。つまり、トーン調整などを間違ってしまっても、いつでも元の状態に戻れるのです。デジタルでもフィルムでも、写真は「カメラ前が大事」。写真は撮影後の処理ではなく、撮影時のライティングによって完成させるものです。しかし、スタジオでの撮影データを注意して見ると、同じライティング、同じ露出を行ったはずなのに、データ上の数値が揃っていないことに気づくはず。これはなぜでしょう?

デジタルカメラは大変な精密機器ですが、それ以上にCCDは敏感で、ストロボの発光量のばらつき、絞りの繰り返し動作のばらつきに影響されているのです。露光量で考えれば10分の1段程度の違いでしょうが、デジタルでは無視できない違いとなって現れます。実際の仕事の撮影では、さまざまなカットで同じ仕上がりが求められるため、トーンやレベル、グレーバランスの調整を行わなければなりません。そして、厄介な問題としてCCD面へのゴミの付着もあります。

つまり、カメラの前できちんと写真が完成していても、何らかの画像処理が必要になる訳ですが、RAWデータならいつでも元に戻れますし、12bit以上の色深度なら安心して画像を加工できます。この安心感は、ワークフロー全体の流れを早くすることにもつながります。今まで「RAWデータは面倒」と思われていた方は、この機会にぜひRAWデータでの撮影にトライしてみてください。

RAWデータにはもうひとつ大切な特徴があります。未現像ゆえ、その画質が進化することです。同じデジタルカメラの画像でも、数年経てば周辺機材や現像アプリケーションの進歩によって驚くほど高画質に現像できるのです。急激に進歩したデジタル技術なので、今後はドラスティックな変化はないかもしれません。しかし確実に言えることは、「あなた自身が進化する」ということです。RAWデータの現像に積極的に取り組めば、現像だけで思い通りの色とトーンを作り上げることも可能です。そのコントロール性はフィルムの比ではありませんし、その時こそ、フィルムで培ってきた撮影ノウハウが活かされます。RAWデータはフォトグラファーにとって大切な資産。積極的に活用しましょう。そして、くれぐれもRAWデータで入稿してはいけません。TIFFやJPEGといった汎用的なデータ形式に現像し、自身の表現を確定した上で渡すのがプロフェッショナルです。ゴミ取りも大事なエチケットです。RAWデータは未現像フィルムということを忘れないでください。

 
 
 
 
 

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