茂手木秀行【連載】フォトグラファーのためのデジタルワークフロー:第4回

デジタルフォトは機材選びから始まる

350dpiが求められる理由

国内の印刷では、一般的に350dpiの画像解像度が求められます。これは印刷スクリーン線の数が175lpi(line per inch)であることに由来し、スクリーン線は画像の半分を隠すために倍の350dpiとなるのです。ではなぜ、175線なのでしょうか?

1インチあたり175本の線が交差して得られるアミ点の大きさは、175dpiと考えることができます。すると25.4ミリ÷175で0.145ミリ、つまり145μm。多くのサンプリングから人間の目の近点距離は約25センチで、これを明視距離と呼びます。明視距離250ミリの場合、視力1.0の人が見分けられる大きさは約73μmと言われています。

日本の雑誌やカタログは、A4サイズを基本に作られているのが一般的。見開きではA3になりますが、これは両手で本を持ちながら腕を伸ばした距離を考え、その距離を明視距離の倍、約50センチであろうと規定した上でのサイズです。すると人間の目が認識できる大きさは約146μmとなり、アミ点の大きさとほぼ同じで可視限界の中に入ってきます。可視限界以下であれば、アミ点として認識されずに滑らかな画像として観測できるのです。

このことから印刷サイズが大きくなればなるほど観測距離も離れ、可視限界が大きくなるという理由から要求される画像解像度も低くなります。逆に高精細印刷と呼ばれる分野では、完全に可視限界以下に入ることが求められるため、600dpi以上の画像解像度を要するケースもあるのです。

デジタルカメラから得られる画像サイズ

実際のデジタルカメラから、どのような大きさの画像を得ることができるのでしょうか。もう一度、デジタルカメラの画素数とセンサーサイズの比較図を見てください。

デジタルカメラのセンサーサイズと実際の画素数の比較。
デジタルカメラのセンサーサイズと実際の画素数の比較。
*クリックで画像を拡大できます

まずは画像解像度350dpiで計算しましょう。1200万画素のデジタルカメラでは、4288/350×2848/350で約12.25インチ×8.14インチ≒約311ミリ×207ミリの画像が得られることになり、ほぼA4サイズを満たします。同様に3300万画素で計算すると、350dpiならば488ミリ×366ミリとなり、B3のサイズに近似します。これにリサイズを加えた場合の計算をまとめたのが以下の表です。

1200万画素/3300万画素のデジタルカメラの撮影データが、リサイズによって得られる画像の大きさ。
1200万画素/3300万画素のデジタルカメラの撮影データが、リサイズによって得られる画像の大きさ。
*クリックで画像を拡大できます

リサイズして画像解像度を下げると、意外に大きなサイズにできることがわかります。経験的にリサイズは、200%までならほぼ満足できる画質を保てます。200%以上の場合、印刷機のRIPでリサイズするほうが良好な結果となるのも一般的。フォトグラファーの立場から、出力するデータは元画像の200%までと考えておくといいでしょう。もちろん、リサイズ・再サンプリングをしないセンサーネイティブの100%で作る画像のほうが、より鮮鋭度が高いことは言うまでもありません。

あなたに必要な画素数とは

ここまでの計算を踏まえて、自分の仕事に必要な画素数を割り出しましょう。もちろん、画素数が多いほうが余裕を持てますが、画素数に比例してデータ容量も大きくなります。その場合は、保存先となるハードディスクの容量や画像を快適に扱うためのCPU、メモリのアップグレードも必要。扱うデータが増えればシステム全体を見直すことになり、単にデジタルカメラを買うだけでは済まなくなります。撮影から出力までのトータルシステムを考えることも、デジタルフォトならではの特徴と言えるでしょう。

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