茂手木秀行【連載】フォトグラファーのためのデジタルワークフロー:第5回

デジタルフォトは機材選びから始まる Part.2

光学理論から解像力を考察

前回は画像解像度の観点から実際の仕事に必要な画素数について解説しましたが、今回は簡単な光学理論からデジタルカメラの解像力を考えてみます。

「必要な画素数を満たしていれば、それでよいのでは?」と疑問に思う人もいるでしょう。必要な画素数を得ることは、可視限界の中に入る滑らかな画像を得るための最低限の条件です。しかし、これは実際の解像力、どこまで細かく被写体を分解するのかという点とは同一ではありません。フィルムの時は、印刷される大きさに合わせてフィルムのフォーマットや粒状度を選んでいました。画素数は、フィルムの粒状度であったと考えると分かりやすいでしょう。同じ35ミリ版からでも、印刷あるいはプリントのサイズが大きければ低感度で粒状の細かいフィルムを使用し、小さければ粒状の荒いフィルムでもOK、といった選択肢でした。さらに大きく使うなら、ブローニーサイズや4×5、8×10という選択もされていたことと思います。

フィルムではプリントサイズが同じ場合、より大きなフォーマットで撮影された写真のほうが、より高い解像度でした。これはなぜでしょうか? そしてデジタルでも同じなのでしょうか?

レンズは絞るとボケる

写真用レンズは一般に絞ると性能が上がり、さらに絞ると結像性能が悪くなることが知られています。各レンズメーカーの設計思想によって差はありますが、単焦点レンズではF8前後が最高の解像力である場合が多いようです。レンズには必ず収差があり、像にボケや歪みが生じます。また、光の波長の違いで生じる色収差、ザイデルの5収差(球面収差・コマ収差・非点収差・像面湾曲・歪曲)のほか、高次収差と呼ばれる細かく分類された収差もあります。

これらの収差が複合して現れることで像がボケてしまうのですが、複数のレンズを適宜組み合わせて収差を軽減しています。そして、一般的にレンズの口径比が大きい(F値が大きい)ほうが収差の発生量が小さくなるため、レンズを絞ったほうが高い解像力を得られるという訳です。

レンズを絞ったほうが高い解像力を得られます
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しかし、レンズを絞ってF16やF22あるいはそれ以上に絞ると像が甘くなることもよく知られています。この現象は光の回折によるもの。光は波としての性質と粒子としての性質を持ちますが、回折はまさに波としての性質です。以下の図を見ながら小さな港を思い起こしてください。外洋からの「うねり」の波が港に向かってやってきますが、堤防(絞り)に当たったところから回折現象によって新たな波が発生します。この波がうねりの波と重なり合い、干渉波として本来のうねりの波を乱します。これが光の場合、像を乱す、つまり像をボケさせる要因となるのです。レンズが幾何学的に有限の大きさを持つ以上、設計上無収差だとしても、必ず起こる解像度低下の要因です。さらに絞りが小さくなればなるほど、本来の光に対する干渉波の割合が多くなってボケも大きくなります。

中絞りが小さくなればなるほど、本来の光に対する干渉波の割合が多くなってボケも大きくなります
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次に像の収束度について見てみましょう。ここからは、まったく収差のない仮想のレンズを想定します。レンズに収差がないのであれば、「点」は「点」として結像しなければなりません。「点」は幾何学的に面積を持たないからです。「点」を光として扱う場合、「無限遠にある一点」から発せられた光となり、近似のものとして星の光がそれに該当します。実際の結像結果はというと、「点」ではなく面積を持った像となります。これは前述した光の回折現象から以下の図のように結像し、全体を回折像、その中心部分を「エアリーディスク」と言いますが、最小の結像という意味合いから最小錯乱円とも呼ばれています。また、回折現象によって回り込んだ光の強度分布を「ジフラクションリング」と呼びます。

エアリーディスク、ジフラクションリング
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最小錯乱円が実質上の最小の結像なので、2つの「点」を仮定し、点を分解できる時の像の角度がそのレンズの持つ最大の分解能、つまり解像力となります。英国の物理学者レイリーは2つの回折像を近づけ、一方のジフラクションリングの第一暗環が他方のエアリーディスク中心と重なり、双方のエアリーディスクが重なった谷間の合成強度がエアリーディスク中心の強度の74%になった時であると数学的に表しました。これが「レイリーリミット」です。

レイリーリミット
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この限界分解能は、明るさの等しい2つの星を肉眼で観察した時の分解能ですが、一般の写真用レンズもこの回折現象による分解能の規定に従います。高度な画像処理ができる現代のデジタル画像と無収差に近いレンズの組み合わせであれば、この分解能を上回ることも可能でしょう。

次ページ: 限界分解能を決定する要因

 
 
 
 
 

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