茂手木秀行【連載】フォトグラファーのためのデジタルワークフロー:第5回
デジタルフォトは機材選びから始まる Part.2
画角を決めるのは焦点距離
ここでもう一度、レイリーリミットを思い出してください。写真は「画」を作るものですから、レンズの持つ画角がとても重要です。フィルムの場合、中判デジタルならほぼ645判、APS-Cなら35ミリ判フルサイズの約1.5倍の焦点距離換算。標準レンズと言われる50度前後の画角を持つレンズをピックアップすると、それぞれ80ミリと35ミリになります。過去のさまざまなレンズのデータから、F8前後に絞るとそのレンズの最良画像を得られることを前提に、最良の解像度を求めるためにF8で撮影したと仮定します。その時の限界分解能を以下の表にまとめてみました。
表についての補足説明をしましょう。まずF8に絞る理由ですが、これは収差のある現実のレンズで最良の解像力が得られるであろう絞り値として例示しました。この時のエアリーディスク直径は、双方とも9.76μm。画素ピッチが4.5μmであるAPS-Cサイズは何ら問題なく、画素ピッチが9.6μmである中判デジタルもエアリーディスク以下に収まっています。それぞれのレンズの絞りが完全に円形だとして、その有効口径DはD=f/Fですから、中判デジタル+80mmレンズでは10mm、APS-C+35mmレンズでは4.375mm。有効径に比例する限界分解能は、中判デジタルでは12.6秒、APS-Cでは28.76秒です。つまり画素ピッチが多少広くとも、解像力においては中判デジタルが有利、センサーサイズが大きいほうが有利となり、フィルムのフォーマットと同じことが言える結果になるのです。
むろん、解像力を決める要因はこれだけではありません。しかし、回折限界という物理的な限界が最終的な解像力に及ぼす影響が大きいことを、カメラ選びの際の基礎知識に加えていただければと思います。
現実的なカメラ選び
今回は、同じ画素数でセンサーサイズが違うCCDを仮定しましたが、印刷線数を満たす解像度を考える必要があります。例えば、可視限界と観察距離の関係から、最も厳しい観察条件となるのは一般的にA3の印刷物だと言われています。A4サイズの雑誌での見開きページになりますが、これは1200万画素クラスで必要十分な条件を満たすということを前回も説明しました。
ブレていない、ピントがきちんと合っている画像なら、適切な画像処理を施せば問題はありません。しかし、もう一段上の高精細な描写がしたい、あるいはトリミングをしたいという要望の前には、いささか力不足であることは否めません。そこで仕事という観点から見た場合、A3で印刷する頻度がカメラ選びのひとつの基準となるでしょう。A3の仕事がそれほど多くない方であれば、現在の1000万画素クラスで十分。仮定の話をすれば、今後出揃うであろうスモールフォーマットの2000万画素クラスも選択肢になるはずです。A3サイズ以上の印刷やトリミングを前提とする仕事が日常であるなら、迷わずラージフォーマット2000万画素クラス以上となるでしょう。
また、現実のカメラ選びでは連続撮影枚数や連写枚数、AFの精度といったカメラの機能も重要な要素です。こうした部分の優位性は、明らかにスモールフォーマットの一眼レフタイプに分があります。その一方で、ラージフォーマットではバックタイプという既存のカメラに後付けするものが多く、その利点を生かして4×5や昔の機械式カメラに取り付けられるタイプも存在します。機動性を必要としない場合は資産を無駄にしないという観点から、こうした選択肢を考えてもいいのではないでしょうか。

TOYO Field 4×5+Leaf Aptus75s。機動性はありませんがアオリを駆使した撮影が可能になります。

Hasselblad 500CM+Leaf Aptus75s。発売後、数十年を経た純機械式500CMも最新のデジタルカメラに。
絞りも大事な光学性能
カメラについてのお話をするのは今回で終わりですが、最後にTipsをひとつ紹介します。以下の2つの写真を見比べてください。


どちらも4×5レンズの絞りですが、上の写真は明らかな五角形。対して下の写真は、10枚羽根で円形に近いものです。1ページ目にあるエアリーディスクの図をもう一度ご覧ください。エアリーディスクの周りには、ジフラクションリングという回折現象による光のリングがあります。絞りの形はジフラクションリングに影響を与えますが、五角形の絞りだからといって、ジフラクションリングも五角形になる訳ではありません。角があることで複雑な回折が生まれ、複雑な干渉波を作ります。そして2点間のレイリーリミットを考える時、さらに複雑に干渉波を作るので限界分解能をやや下げる方向に働きます。カメラを選ぶ際には、レンズの絞りの形も多少は気にしておくといいでしょう。4×5レンズでの撮影をお考えなら、古いシャッターユニットに交換するのもちょっとした楽しみです。分解能に限らないレンズの描写において、絞りが円形に近いほどボケ味が素直になるというのも、よく言われている事実なのです。



