一億円の契約書を待つ、締切直前のオフィス。オーディション中、下剤を盛られた子役の少女。推理力を競い合う大学生。別れを画策する青年実業家。待ち合わせ場所に行き着けない老人。老人の句会仲間の警察OBたち。真夏の東京駅、二七人と一匹の登場人物はそれぞれに、何かが起こる瞬間を待っていた。迫りくるタイムリミット、もつれ合...
「『蝙蝠』が上海に入った」。豫園からほど近い路地裏の骨董品店に緊張が走った。門外不出のお宝が闇のルートで輸入されたのだ。虎視眈々と狙う店主だが、なぜか問題の品は、人気急騰中のホテルの厨房に流れ着いていた……。かつて東京駅で数奇な運命を共にした面々に、一癖も二癖もある人物たち、さらには動物園脱出を目論むパンダも加...
芝居に情熱を傾ける人々が、一人の天才的な感覚を持つ少女と出会い、心をつかまれていく演劇群像劇。直木賞作家、恩田陸がオーディションを舞台に描く物語は、あとがきにもあるように『ガラスの仮面』へのオマージュだという。演技の経験も指導も受けたことがないのに、一度芝居を始めると、目を離すことができないほどすさまじい才能を...
太古の森をいだく島へ――学生時代の同窓生だった男女四人は、俗世と隔絶された目的地を目指す。過去を取り戻す旅は、ある夜を境に消息を絶った共通の知人、梶原憂理(ゆうり)を浮かび上がらせる。あまりにも美しかった女の影は、十数年を経た今でも各人の胸に深く刻み込まれていた。「美しい謎」に満ちた切ない物語。
10代後半の多感な若者たちが、ただ一緒に歩くことを通じて、胸の奥に秘めていた思いを通わせていくさまを描いた青春小説。2006年に実写映画化されるなど、根強い人気を誇る恩田陸の代表作だ。高校生活の最後を飾る学校の伝統行事、“歩行祭”。全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通すそのイベントで、主人公の貴子は誰にも言えな...
コンクール入賞者ツアーのはざま、亜夜とマサルとなぜか塵が二人の恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。菱沼が課題曲「春と修羅」を作曲するきっかけとなった忘れ得ぬ教え子への追憶「袈裟と鞦韆」。幼い塵と巨匠ホフマンの永遠のような出会い「伝説と予感」ほか全6編。最終ページから読む特別オマケ音楽エッセイ集「響きと灯...
直木賞作家、恩田陸による自身の事実とフィクションを重層的に織り交ぜたメタフィクション。“事実に基づく物語”を書こうとする作家、作中作で書かれた小説、その小説が舞台化される過程に立ち会う作家という3つのパートが同時進行する入れ子構造になっている。学生時代に友人だったある女性2人が橋から飛び降りて自殺した。40代半...
現代の語り部が贈る、幻想ホラー超大作。直木賞&本屋大賞ダブル受賞の著者の会心の作品。 詳しく見る この作者の本
「夜のピクニック」や「蜜蜂と遠雷」など、ジャンルの枠にとらわれず幅広いテーマで作品を発表し続け、郷愁的な情景描写の美しさから"ノスタルジアの魔術師"と称される作家、恩田陸。本作「麦の海に沈む果実」は、深い闇に包まれた幻想的な世界観が魅力のミステリー小説。記憶をなくした主人公の理瀬は、世俗と隔絶した全寮制の学園へ...
膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから――「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?...